今日は、久しぶりに宅地の買い取り相談を受けた。
私の勤める会社は宅建業も兼ねる林業会社なのだが、不動産売買に関わる時は9割が「山林」や「原野」。残りの1割で「宅地」と「農地」くらいの割合。(ちなみに、売買の仲介とかではなく、これも99%は買い取るのみ。)
誰も欲しがらない不動産
都会の方とか、あまり不動産に馴染みの無い方だとびっくりするかもしれないが、田舎の不動産なんかタダでも貰い手がいない。下手に貰うと、その後は固定資産税などの維持費がかかるので、使い道のない不動産なんかいらないって考え。
タダで「貰う」場合、つまり贈与の場合は、欲しくなければ「いらないよ」と伝えれば無用の不動産を引き受けることもない。
売買や贈与の場合は、「いらない」と伝えれば、それだけで大丈夫。「押し売り」と言うか、相手に強制的に買わせる事なんて出来ないから。ただし、これが「相続」となると話は変わってくる。
今日、相談を受けた方も「相続」によって不動産を取得した方。不動産を持つ事って、想像以上に負担が生じる。負担が生じる事、今後維持費がかかっていく事に気づいた今日の相談者もそれで悩んでいた。
相続放棄期限切れ
「下手に不動産を取得して、今後、維持・管理していくくらいなら相続放棄してしまおう!」と考えた今日の相談者だったのだが、結局相続放棄する事は出来なかった。
相続放棄するためには期限があって、「相続開始を知ってから3か月以内」に家庭裁判所宛てに手続きを取らないといけない。
残念ながらこの期限を過ぎてしまい、途方に暮れて相談に来た感じ。身内が亡くなって葬儀だなんだとバタバタと過ごし、ようやく落ち着いたかな~なんて思っていれば、3か月なんてあっという間に過ぎてしまう。身内が亡くなった時に「悲しんでいる余裕なんてない!」と言う意見は本当らしい。
相続放棄する事も出来ず、相続してしまった不動産が負担になる前に処分してしまいたいと相談に来てくれたのだが、いかんせん田舎の土地なんか誰も欲しがらず・・・
なんとか処分して貰いたい、買って貰いたいと相談を受けたので、こちらとしても出来るだけ先方の希望を叶えるために努力はするが、正直相当厳しい物件。だって、こちらとしてもタダでもいらないから。
知っていたら違ったのか?
相続放棄しようと決心した時には既に3か月過ぎていて、相続放棄出来なかった。
では、「相続放棄の可能性もあるので、出来るだけ早く今後について検討しよう。」とか「3か月以内に手続き取らないと放棄したくても出来なくなる。」って、知識として知っていたら、この今日相談に来てくれた方も取るべき対応が違っていたのだろうか。
かと言って、身内を亡くした遺族の元に言って、「放棄するなら3か月以内ですよ~」なんて伝える事なんか出来ないし、難しい。
金額提示
相談を受けた手前、こちらとしても評価して金額を提示しないといけない。正直なところ、「タダでもいらねっす~」って言ってしまえば簡単なのだが、そうもいかない。別の意味で失礼になると思うが、二束三文の金額を提示することしか出来ないと思う。
同じ秋田県内でも、駅前とかの不動産になると軽く10倍くらい金額の違いがあるのだろう。もっとも「タダでもいらない」と言われる不動産と比べるのだから、10倍どころではないか。
ちなみに
相続放棄さえすれば、もう不動産の維持・管理をしなくても良いと思っている方が多いが、厳密には国庫に帰属されるまで、つまり国がその不動産を貰ってくれるまで、管理責任からは逃れられない。
「相続放棄」と「相続持ち分の放棄」も意味合いが違う。
書類提出先が家庭裁判所になるので。「相続放棄」の手続きは行政書士は行えない。
この辺の微妙な問題については、また後日記事にしようと思う。
まとめ
相続放棄を考える場合って、「プラスの資産」よりも「マイナスの資産」、つまり亡くなった方が大量の借金を抱えている時などを想像していたのだが、現実にはプラス資産しかなくても相続放棄はあり得るのかと、ちょっと考えさせられる今日の相談だった。
※「不動産」を「”負”動産」と表記する場合もあるので、一概に「プラスの資産」とは言えないのだが、マイナスではない。
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