まずは何する?遺産分割の全体的な流れ

相続

「遺産分割」の言葉そのものについて、多くの方は聞いた事があると思う。「亡くなった親の財産を引き継ぐんだな~」くらいには誰もが思っているかもしれない。

しかし、いざ自分自身が当事者となり、遺産分割行おうとすると、何から手を付けたら良いかわからない。

自分の人生で遺産分割なんてそう何度も行うわけではないのでしかたない。以下、大まかな全体像を確認する。

遺産分割協議の前に

まず必ず最初にやる事。

相続人の範囲の確認

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならない。誰か一人でも協議に参加していなかった場合、その協議は無効となる。

調査の方法としては、亡くなった方の「生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本」を入手して、亡くなった方の関係者を家系図に落とし込む。

「わざわざ戸籍なんかで調べなくても、関係者なら分かる」と思っていても、必ずやる。不謹慎だけど、戸籍で初めて離婚経験の有無や、他に子供を設けていた事などが分かる場合もある。そもそも、今後登記申請などの遺産処理を進めるにあたり、どうせ戸籍等を取得して調べなければいけない。面倒なら専門家にお願いしてしまっても良い。

相続財産の調査

もれなく相続財産を調査しなければならない。プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も調べる。

遺産分割協議が終わってから、新たに財産が見つかったら、再度その財産について遺産分割協議を行わなければならない。

取引している銀行、証券会社、ネット銀行など思い当たる箇所を漏れなく確認する。郵便物等から借金なども把握出来るかもしれない。ただ、個人間でお金の貸し借りなんかしているとやっかいで、それらに気が付かないと見逃してしまう。生前からコミュニケーションを取り、出来るだけ把握しておかないと、やはりその時になって大変苦労する。

遺言書の確認

通常、遺産は法定相続分で分配することになる。「父が亡くなれば、母とその子供で財産をわける」くらいは聞いた事があると思う。

遺産分割協議はこの法定相続分を基本に分配していくのだが(もちろん相続人全員が納得すれば、法定相続分に習う必要なはい)、遺言書があれば、遺言書が優先される。せっかく皆で話し合って協議しようとしているところに、後から遺言書が出てくるとまたやり直しなので、遺言書の有無はしっかり確認しないといけない。

遺言によって遺産のある一定割合を与える(例えば〇分の一を与える)ような包括受遺者(=遺産を貰う人)がいる場合、法定相続人でなくても遺産分割協議に参加しなければいけないので、その意味でも遺言の存在の有無は重要。

遺産分割協議

相続人、相続財産、遺言の有無等を確認したら、遺産分割協議を行う。

相続人が一堂に会して行う必要もなく、電話やメールでも大丈夫。つまり相続人全員の合意があれば良いのだから、Lineでもなんでも良い。誰か一人が分割案を出して、他の相続人がそれに合意すれば、それで遺産分割協議は終わる。

例えば、相続人が母と子供二人の場合、長男が「家は俺が継ぐから家は俺が貰う。少し預金があったからそれらは弟に。母ちゃんは実家で俺が面倒見ていくことになるから、母ちゃんは何もいらないよな」なんて感じで決まってしまう事もあるし、それで問題ない。

遺産分割協議書の作成

法的に作成を義務付けられている書類ではないし、これと言って様式が決まっているわけでもないのだが、不動産の名義変更や、銀行口座の処理やその他財産の名義変更に必要なので、結局作成は必要になる。

遺産分割協議書には、相続分が無い人、つまり遺産を全く貰わない人も署名捺印する。例えば「俺はもう田舎に帰らないから不動産なんかいらないし、預金もそんなにないのだから、全部兄貴にやるよ。だから、俺の相続分は無しでいいぜ。」なんて言う兄弟がいたとしても、この兄弟には他の相続人と一緒に遺産分割協議に参加して貰い、遺産分割協議書の作成を手伝って貰わなければならない。

協議を電話やメールで行い、遺産分割協議書は郵送でやりとりすれば良い。郵送で送って、署名捺印して貰い、印鑑証明書を付けて返送して貰えば良い。それらを相続人全員分行う。遺産分割の内容によっては、一枚の協議書に全員の署名捺印でなくて、相続人全員分の協議書作って、それらに署名捺印して貰っても良い。

相続人に反対する者がいる場合

何度も繰り返すが、「相続人全員で行わなければならない」。「相続人全員で行わなければならない」って事は、誰か一人でも反対したらその遺産分割協議は成立しない。このままでは遺産分割が出来ないので、裁判所を通して遺産分割の方法を決めることになる。

遺産分割調停の申立て

裁判所にて、裁判官一名と調停委員二名を通じて相続人それぞれの意見を聞いて、お互いの妥協点を探る方法。この遺産分割調停で協議が整えば、調停証書が作成され、遺産分割協議書の代わりとなる。

遺産分割の審判

遺産分割調停で協議が整わなかった場合、家庭裁判所の審判手続きへと進む。これは相続人の意思や希望に関係なく、提出された資料等から裁判官が分配方法を決める。決められた結果は、審判所が作成され、遺産分割協議書の代わりになる。

審判に不服がある場合

裁判官が決めた遺産分割内容に納得出来ない場合、審判内容に不服があるとして高等裁判所に即時抗告できる。

審判事件については,裁判官が,当事者から提出された書類や家庭裁判所調査官が行った調査の結果など種々の資料に基づいて審判します。この審判に不服があるときは,2週間以内に不服(「即時抗告」といいます。)の申立てをすることにより,高等裁判所に審理をしてもらうことができます。

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_05_2/index.html

即時抗告すると、家庭裁判所での審判は確定せずに、今度は高等裁判所で審理されることになる。

まとめ

まず、遺言書の有無を確認して、相続人と相続財産を把握する。遺言書があれば原則遺言書通りに遺産分割される。

遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行う。この協議がまとまれば、遺産分割協議書を作成し、それに従った遺産分割を行う。

遺産分割協議がまとまらなかった場合、家庭裁判所にて調停を行う。調停が成立すれば、調停証書が作成され、その調停内容に沿った遺産分割を行う。

遺産分割調停でも決まらなかった場合、家庭裁判所にて審判手続きをとる。審判所が作成され、審判に従った遺産分割を行う。

審判の内容に不服があるなら、即時抗告する。その後は高等裁判所にて審理される。

「相続問題を予防するのには、遺言書が一番だ」と言う行政書士の先生がいた。たしかにこうして遺産分割の流れを確認すると、遺言書があれば、簡単に決まるのかもしれないと思える。もちろん、遺言書の内容にもよるし、相続人に最低限残しておかないといけない財産があったりと、遺言書が万能ってわけではないが、それでも遺言書があれば防げる問題は大いにある。

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