前回の記事で、行方不明者の財産を相続出来るか?処分することは可能か?そもそも相続はいつ発生するのかと言う事で、失踪宣告などを紹介した。
今回は、相続人の中に行方不明者がいた場合、どうするか?
遺産分割協議は全員参加
誰かが亡くなって、相続が発生すれば、遺言が無ければ残された相続人で遺産分割協議を行う。 どこにいるかもわからない、連絡とろうと思ってもつながらない、そもそも生きているのか死んでいるのかすらわからないって相続人に対して、わざわざ協議して財産を相続させる必要はないではないかと思うのが普通の感覚だと思う。
しかし、この遺産分割協議は相続人の全員参加が絶対条件。
相続人が一人でも欠けた状態で協議を行っても無効。 行方不明者だけど、協議に参加した事にしてしまえ・・・と、悪巧みをしても、遺産分割協議書には実印の押印と印鑑証明書の添付が必要になるので、勝手に協議を終わらせる事も出来ない。(ちなみに必ず実印。誤って認印とか押していると、その協議書は無効になってしまう。)
不在者財産管理人の選任申立て
遺産分割協議を行うためには、相続人の全員参加が必要。相続人の中に行方不明者がいる場合、遺産分割協議を進めるためには、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立てを行う必要がある。(民法25条)
行方不明者に代わってこの不在者財産管理人が遺産分割協議に加わることで、遺産分割協議を進めることが出来るようになる。 ただ、この家庭裁判所から選任された不在者財産管理人は、行方不明者の利益を損なうような事は出来ない。不在者財産管理人が「行方不明者に財産残す必要ないので、あなた方他の相続人で財産を配分してください。」なんて事は言ってくれない。原則、法定相続分を確保しようとする。だから、わざわざ手間と費用をかけて不在者財産管理人を立てても、行方不明者の相続分を無しとすることは出来ない。(不在者財産管理人は立場上そうしているだけなので、不在者財産管理人に文句言ってもしかたありません。)
また、遺産分割協議を進めるために不在者財産管理人を選任したとして、その結果無事遺産分割協議が整ったとしても、一度選任された不在者財産管理人の職務が無くなるわけではない。管理人の名前よろしく、その相続した財産を管理しなければならない。不在者(=行方不明者)が現れた時、逆に死亡が確認された時、または失踪宣告がされた時などの事情が生じるまで、その職務は続く。
失踪宣告でもOK
行方不明の期間が7年間を超えている場合など、失踪宣告の要件を満たしていれば、行方不明の相続人について失踪宣告の申立てを行い、この行方不明者を亡くなったとみなして遺産分割協議を進める事も可能。
管理人を立てると費用も発生するので、失踪宣告も有りだと思うが、手続き一つで人間を(擬制)死亡、つまり殺しているようなものだし、ましてやそれが身内となると、なかなか踏み切れない場合もあるかもしれない。
その場合、もちろん失踪宣告の要件を満たしていたとしても、失踪宣告せずに不在者財産管理人を立てても良い。
行方不明者を出さないために
こればっかりは防ぎようがないか。何が原因で行方不明になるかもわからない。本人の精神疾患なのか、事故に巻き込まれたのか、それとも喧嘩別れしてしまったのか。
常日頃から連絡を取り合っていればお互いの生死はわかるかもしれないが、なかなか他人の生活に干渉するわけにもいかないし、意外と煩わしい。もともと仲の良い親族なら、放っておいても勝手に連絡取り合うのだが、何かのきっかけで喧嘩でもして仲が悪くなれば、ぱったりと繋がりは消えるだろう。
自分の相続人に行方不明者がいる(もしくは今後連絡取れなくなりそうな人がいる)なら、生前から遺言等活用して対策をしておかないと、相続人にいらぬ負担を強いてしまうし、また行方不明者に法定相続分の遺産を残すことになってしまうので、改めて身内の仲を見直したら良いかもしれない。
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