行政書士開業前に会えて良かった!不動産売買と広域交付住民票

日々の仕事

広域交付住民票とは、住民登録地以外で交付される「住民票の写し」の事。林業会社で不動産売買を担当しているのだが、恥ずかしながら「広域交付住民票」なる書類を始めて見た。

とあるお客さんから杉の立木の伐採を依頼され、どうせなら周りも一緒に伐採したいと周りの土地を所有している方に交渉したところ、快諾してくれた。(木の伐採については、重機の配送料等がかかるため、まとまったボリュームがあった方が、売主にとっても、我々林業会社にとってもありがたい。)

今回購入するのは、立木だけではなく、土地ごとの購入。売買を原因とする不動産の所有権移転登記はそこまで難しい登記ではないので、司法書士に頼むこともせず、自社で行う。

お目当ての土地の登記簿謄本を確認すると、所有者の住所地が「神奈川県」だった。ところが、現在住んでいるのは「仙北市田沢湖」。所有権移転登記の前提として、登記簿上の住所を現在の住民票登録地に直さないといけない。所有権移転登記申請書に売主側の印鑑証明書を添付するのだが、その印鑑証明書に記載されている住所と、登記簿に記載されている住所が一致しないと、法務局は真正の所有者だと判断しないからなのか?登記の専門家ではないので、その辺の詳しい理由は知らないが、登記の専門家ですらこの住所変更を見落として、移転登記申請を取下げる場合もあるらしい。

現実問題、引っ越しの度に、わざわざ住所変更登記を申請する方もいないと思う。前住所が記載されている“新しい”住民票を添付して、簡単な登記申請書を作成すれば良いので、登記手続そのものは簡単なのだが、自分で申請するにしても不動産一つにつき1,000円の税金がかかるし、もちろんプロに頼めばこれら税金の他に報酬も発生する。相続が発生した時とか、売買が決まった時のようなきっかけがないと、わざわざ住所変更登記を申請しないのが実情。これについては、今後義務化されるような動きもあるが、国民の負担が相当増えるのではないか・・・

不動産住所変更登記に話が脱線してしまったので、もとに戻すと、

この住所変更登記は自分でやってもらうか、司法書士に頼んで貰うしかなく、私が(=買主である会社が)登記申請することは出来ない。「わざわざ(住所変更登記申請を)お金かけて司法書士に頼んでくれるのか・・・どうしたもんかな・・・」と不安を抱きながら、お客に確認すると、そもそもまだ住所を仙北市に移していないとの事。

プライベートの事なので、あまり詳しく聞くこともしなかったけど、住民票登録地は「神奈川県」のままで、まだ仙北市には住民票写していないらしい。こちら仙北市にも立派なお宅を構えて、どうやら神奈川県にも自宅があり、配偶者(夫か妻かは伏せておきます)はそちらにお住まいのよう。仕事の都合で秋田と神奈川を行ったり来たりしているのか、一時的に秋田に来ているのか、そこまで突っ込んだお話をしなかったけど、とりあえず住所変更登記が必要なさそうなので、一安心。

さて、本人確認と正確な契約書及び登記申請書類を作成のためにも、通常売主には契約に先立ち「住民票の写し」を取得して貰う。先に、FAXなり郵送なりで住民票貰って、住所・氏名をしっかり確認してから書類を作成し始める。

今回のお客さんは神奈川県の住所地なので、あちらの市役所と郵送でやり取りするのだなと思っていたら、もう既に「広域交付住民票」を取得したと。

恥ずかしいと言うか、情けないと言うか、住民票登録地以外の市町村役場で、全国の住民票を取得出来るとは知らなかった。仮にも行政手続の専門家である行政書士を目指しているのに、こんな事も知らなかったとは。

実際に「広域交付住民票」を見せて貰うと、「住所」の欄に神奈川県の住所が記載されている。それを証明するのに、「秋田県仙北市長」の印が押されている。見慣れないので非常に不自然。交付年月日と市長印の前に、「この住民票の写しは、住所地市町村長から請求に係る住民票に記載されている事項が住民基本台帳法第12条の4第3項の規定により通知され、その通知に基づき作成されたものです。」と記載されている。

(本人等の請求に係る住民票の写しの交付の特例)
第十二条の四 住民基本台帳に記録されている者は、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長(以下この条において「住所地市町村長」という。)以外の市町村長に対し、自己又は自己と同一の世帯に属する者に係る住民票の写しで第七条第五号、第九号から第十二号まで及び第十四号に掲げる事項の記載を省略したものの交付を請求することができる。この場合において、当該請求をする者は、総務省令で定めるところにより、個人番号カード又は総務省令で定める書類を提示してこれをしなければならない。

2 前項の請求を受けた市町村長(以下この条において「交付地市町村長」という。)は、政令で定める事項を同項の請求をした者の住所地市町村長に通知しなければならない。

3 前項の規定による通知を受けた住所地市町村長は、政令で定める事項を交付地市町村長に通知しなければならない。

4 前項の規定による通知を受けた交付地市町村長は、政令で定めるところにより、第一項の請求に係る住民票の写しを作成して、同項の請求をした者に交付するものとする。この場合において、交付地市町村長は、特別の請求がない限り、第七条第四号、第八号の二及び第十三号に掲げる事項の全部又は一部の記載を省略した同項に規定する住民票の写しを交付することができる。

5 第二項又は第三項の規定による通知は、総務省令で定めるところにより、交付地市町村長又は住所地市町村長の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて相手方である住所地市町村長又は交付地市町村長の使用に係る電子計算機に送信することによつて行うものとする。

6 第十二条第二項(第二号を除く。)及び第六項の規定は、第一項の規定による請求について準用する。この場合において、同条第六項中「市町村長」とあるのは、「第十二条の四第二項に規定する交付地市町村長」と読み替えるものとする。


せっかく条文についての記載があるので、条文にあたってみる。交付依頼を受けた住所地以外の市町村長が、住所地の市町村長に対して、「こちらで住民票発行してあげるから、住民票に記載している事項を教えて!」ってお願いして、お願いされた住所地の市町村長は「記載内容はこれね、お手数おかけしますがうちの市民ですのでよろしく。そういえば、余計な事は記載しないでね」ってやり取りしているようで、想像を膨らますと面白い。

こんなに便利なシステムが運用されているのに、全く知らなかった。本気で情けない。なお、この「広域交付住民票」は、住民票登録地で発行される普通の住民票と違い、「本籍」、「筆頭者」などが記載されないらしい。そこまでの情報が欲しいのならば、やはり住所地の市町村長へ請求しないといけない。

自分の無知を情けなく思うのと同時に、一つ賢くなった!と思っていたのだが、お客さんから「印鑑証明書は郵送で取得出来ないみたいなので、神奈川にいる配偶者に印鑑カード送って、代わり取得して貰いますので、印鑑証明書については、少し時間下さい」との事。

今回の不動産売買に関して、売主さん側に用意して貰うのは「住民票」と「印鑑証明書」(登記識別情報、つまり昔で言うところの権利書は手元にあるはず)。この「住民票」と「印鑑証明書」に関しては、住所地の市町村役場に郵送申請で大丈夫だろうと勝手に考えていたのだが、印鑑証明書の郵送申請がダメだったとは。確かに、印鑑カードの問題もあるため、ちょっと考えれば郵送申請が出来ない事も理解出来るのだが、何の疑問も無く、自分勝手に「郵送申請」と思いこんでいた自分が情けない。

今回の不動産売買は、面積もかなり少ない土地で、また売買代金も世のお父さん方のお小遣い程度かと思う。住所変更登記も必要ないし、登記識別情報もしっかり管理されているし、今回の登記申請は簡単な案件だな~と思っていたのだが、学ぶべき事は多かった。また、行政書士開業する前に出会えた案件で良かったと思う

まだまだ勉強が足りないと痛感した案件だった。

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