Q:建物を解体した場合、何か手続きは必要ですか?
A:登記されている建物なら、建物滅失登記の申請と、場合によっては市町村役場への届出。
登記済建物
最近、会社所有建物を解体した。場所は上小阿仁村。久しぶりの手続だったので、備忘録がてら、手続き内容を記しておく。
登記申請
建物を解体したら、管轄の法務局に「建物滅失登記」を申請する。法務局のホームページにて書式や記載例なんかをダウンロード出来るので、素人でも申請出来ると思う。申請の際に払う登録免許税(手数料みたいなものか?)も無料。自分での申請が難しいと思ったら、土地家屋調査士にお願いする。
申請義務
不動産登記法上、建物を解体したら、解体した日から一カ月以内に「建物滅失登記」を申請しないといけない。これを怠ると、「10万円以下の過料に処する」と定められている。
※過料とは・・・行政上の罰。少額の金銭を徴収される。罰金などとは違い前科もつかないし、弁明の機会も与えられる。法律で定められているけど、罰金ほど厳しくないし、あまり過料を徴収されたとは聞いたことがない。日常言葉としての「罰金」と、法律上の「罰金」の意味は違う。ちなみに、自動車運転中にスピード違反で捕まって支払う金銭は「反則金」と言って、また扱いが違う。
ただ、どこまで徹底されているかは不明。建物は取り壊されているのに、登記上はまだ存在する事になっている建物なんかいくらでもある。
過料より固定資産税
土地や建物の不動産を所有していると、固定資産税がかかる。毎年、5月頃に市町村役場から明細と納付書が送られてくる。
正直なところ、「建物滅失登記」を申請するのは、上の「10万円以下の過料に処する」を気にしてではなく、固定資産税がかからなくするためだろう。
建物滅失登記を申請するのは法務局。建物滅失登記を処理した法務局は、その不動産のある市町村役場へ通知するらしい。どんな通知かはもちろん知る由もないのだが、イメージとしては、「建物解体して滅失登記したので、市町村役場の固定資産課税台帳から外してください」みたいな感じだと思う。
結果として、建物滅失登記を申請しておけば、来年度以降、その解体した建物分の固定資産税はかからなくなる。逆に、滅失登記申請をしないと、市町村役場としても建物を解体した事を知るすべがないので、来年度以降そのまま固定資産税が課税される場合がある。
(※市町村役場の職員が、建物の解体に気が付けば、届出を促したり、勝手に台帳から外してくれることもある。田舎ならではか。)
未登記建物
通常、家を建てるときは金融機関からの融資を受けて、その建物に抵当権を設定するのが普通だと思う。抵当権を設定(=抵当権の登記を)するためには、その前提として建物の登記が必要だから、建物は登記されている事がほとんど。
しかし、なかには登記されていない建物もある。古いお宅なんかだと、登記されていないことも多い。試しに、自分の実家を調べたら、未登記建物だった。
登記されている建物ならば、建物滅失登記を申請すれば、おのずと市町村役場へも通知が行くので、滅失登記申請さえしとけば良かったが、そもそも登記されていない建物の場合はどうするのか?
家屋滅失届
市町村役場毎に名称は異なるだろうが、「登記されていない建物を解体した場合の届出書」がちゃんと用意されている。
市町村役場の固定資産税の担当窓口へ行って、「登記されていない建物を解体したから届出したい」と伝えれば、用紙をくれる。その場でも記載できる簡単な書類なので、窓口で聞きながら書いてしまった方が良いかもしれない。その際には、認印と可能であれば「固定資産税課税明細」を持参すると、話が早いはず。「固定資産税課税明細」は無くても、その場でも無料で貰えるはず。
登記されていない建物に関しては、この届出書を市町村役場の固定資産税担当窓口に提出しておけば、次年度以降の固定資産税は課税されなくなる。
登記+届出
今回の私の対応した上小阿仁村役場の場合だと、登記に加えて届出も出して欲しいと言われた。「登記済みの建物を解体して、今、滅失の登記申請中なんだけど、そちらにも届出いりますか?」って聞いたもんだから、聞き方が悪かったかもしれない。
※実はこの案件は、解体の前から上小阿仁村役場とやり取りしていたので、その報告も兼ねての電話だった。また、登記上の建物と、市町村役場の把握している建物が異なる場合があるので、その確認の意味でも、今回は役場にも連絡入れた。普通は、登記申請すれば、わざわざ解体の届出はしないのだが、そんなに手間でもないから、このように役場にも一本連絡入れておくと、誤って固定資産税が徴収されることもないと思う。
番外編:建物の売買
ついでなので、建物の売買について。
登記済み建物
登記されている建物ならば、建物解体時の手続のように登記申請を行えば、法務局から市町村役場に通知が行き、次年度以降は新しい所有者に売買した建物の固定資産税が課税される。※売買の場合は、「所有権移転登記」を行う。高額な売買なので、普通は司法書士にお願いする。
未登記建物
なかなか登記されていない建物の売買もないかもしれないが、私はそれなりに経験している。田舎のご近所さん同士なら、わざわざ登記等に費用かけないために、未登記のまま建物の売買なんかもやってしまう。
これも未登記建物を解体した時と同じように、直接市町村役場へ届出を提出してしまえば良い。
例えば仙北市の場合、「未登記家屋名義変更届出」と言う書面が用意されている。これは買主側が提出しても、売主側が提出してもどちらでも良いらしく、また押印の必要もない。ただし、市町村によって取扱いは異なると思われるので、事前に問い合せは必要か。
建物を解体したら忘れずに
売買の場合は、登記がからむ事が多いと思うし、プロ(不動産業者や司法書士)が間に入る事がほとんどだろうから、それほど問題はないと思うが、解体に関しては、手続きを忘れてしまう事もありそう。
私は、未登記建物の売買について届出を忘れていたので、前所有者に固定資産税が課税されてしまった事がある。売主、買主ともに身内(グループ会社)だったので問題にはならなかったが、これが個人のお客さんだったら、謝りに行っただろう。
登記済みの建物の建物滅失登記を申請する場合、解体業者に「解体証明書」を作成してもらい、それを添付して登記申請する。だから、解体業者も建物滅失登記の事はわかっているだろう。
親切な業者ならば、こちらから何も言わなくても解体証明書をくれたり、役所への届出を促してくれるだろうが、なかにはこちらから請求しないと証明書をくれない業者もいる。
素人にはちょっと手間かもしれないが、建物の解体をしたら、登記または届出を忘れないように気を付けないといけない。と、同時に毎年贈られてくる固定資産税課税明細をしっかり見て、すでに解体されている建物が明細に載っていなか等、確認した方が良い。
役所と言っても業務を行っているのは人間なので、普通にミスはあり得るし、意外とこちらのお願いとかも聞いてくれる。疑問に思うことは、丁寧に質問してあげたら良い。特に、税金を扱う部署と言うのは、一番クレームやら暴言を受ける部署らしいので、すごく丁寧に対応してくれる。※相手が丁寧だからと、こちらが横柄になってはもちろんダメ。やられて嫌な事はしないが基本。
建物を解体したら登記申請又は届出をしておかないと、来年度以降も固定資産税が課税されてしまう。誤って課税された場合、さらに次の年からの課税から外して貰う事は簡単だが、今年分として一度課税されてしまったらそれをひっくり返す(返却して貰う)のは困難。
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